ふじけんの資材置場

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Matt Reeves監督「THE BATMAN-ザ・バットマン-」の感想

Matt Reeves監督「THE BATMAN-ザ・バットマン-」の感想~なぜTHE BATMANバットマンは惨めなのか~

毎度ご訪問ありがとうございます。ふじけんです。

今回は2022年3月11日公開の「THE BATMAN-ザ・バットマン-」についてです。
自分はアメコミのバットマンバットマンが登場するこれまでの映画作品をすべて見ているわけではありません。あくまもこの作品を見て得られる情報から意見を形成しています。

作品のネタバレを含みます。また個人の感想であり、事実とは異なる記載が含まれることがありますのでご容赦ください。

 

 

作品を見た最初の感想は「バットマン惨めで可哀そう」でした

私は前述の通りバットマンのアメコミも読んでいないですし、映画で記憶にあるのはダークナイトジャスティスリーグのみです。あとは映画解説で半ばネタ的に取り上げられているのを聞いたくらい。

そんな私のバットマンに対する印象は寡黙(クール)で完璧であるという印象でした。Wikiで見ても頭脳明晰、武術についても達人レベルみたいな記載がありますしね。

ところが本作のバットマンの印象は「うわぁ惨め。。。もはや可哀そう」でした。なぜ私がそのように感じたのか、その理由について記録も兼ねて書いておこうと思います。

なお、以降は主観の感想になります。作品に関する客観的な情報やそれを基にした考察ではありませんのでご注意を。

理由その1:バットマンの行為=”復讐(Avenge)”の正当性に疑問が呈されている。

他の作品の詳細な設定は知りませんが、今作においてブルース・ウェインは両親を殺した犯人を探すため、そしておそらく成敗するためにバットマンとして活動していました。

しかし作品中盤、ブルースは犯罪王のカーマイン・ファルコーネから父親であるトーマス・ウェインが自らのスキャンダルをもみ消すために記者の殺人を依頼したこと(事実かは不明です)、育ての親であるアルフレッドからRenewal政策に関する寄付金を巡るどさくさの中で誰か(作中では断定されていない)に殺されたことを聞きます。

つまりブルース・ウェインの父親トーマス・ウェインはまったくの清廉潔白な人物であったわけではなく、いわば罰せられるだけの罪を犯している人物であったのです。

作品が進むにつれ、バットマンブルース・ウェインが子供の頃には知らなかった父親の罪が明かされていくことで、バットマンが両親を殺した犯人="悪"を成敗するという行為=”復讐(Avenge)”の正当性が弱まっていくのです。正当性のない暴力を振るうのであれば、それはもはやヒーローではないのではないでしょうか。

理由その2:ブルースウェインは敵役のリドリーと同族だから

本作の敵役であるリドリーはウェイン家の会計士であり、業務に従事する中でRenewal政策に関する汚れた金の存在とその利益を一部の権力者(作中では市長=政治家、警察高官、検察)のみが享受している事実を知ります。その事実を知ったリドリーは会計士としてそんな不正は許せないという彼なりの正義に従って本作の連続殺人事件を引き起こしていくのです。

彼の考えでは、自分や一般市民は不正な資金で私腹を肥やす権力者の被害者であり、権力者を殺すことは正当な”復讐(Avenge)”であるのです。これはブルース・ウェインバットマンとして"悪"を成敗するのと同様のロジックです。

作中の演出でもブルースとリドリーが似たような人物であることが描かれています。具体的にはなぞなぞの問答のシーンです。リドリーは事件の都度なぞなぞをブルース・ウェインに出していますが、ブルース・ウェインはこのなぞなぞに常に即答しています。リドリーが出題するなぞなぞは知識を問うものや論理的なパズルというよりは思考テストに近い問題となっており、ブルース・ウェインがこのなぞなぞに即答できるのは彼が頭脳明晰だからというより、思考パターンがリドリーと同一であることを表現しているのだと思いました。

以上より、私はブルース・ウェインバットマンとリドリーは同族であると思ったのですが、さて、みなさんはリドリーについて印象を受けましたか?容姿、行動、そしてアーカム収容所での話し方。。。正直私は不快感を覚えたのです。

理由その3:アクション演出としてバットマンやられすぎ

理由その1とその2は主にストーリーに関する理由でしたが、それ以外に演出面、アクションについても、バットマンがやられすぎだという印象を受けました。敵にガンガン銃で撃たれては倒れ、ビルからかっこよく飛び降りたかと思えばパラシュートを開くのが遅く、バスに衝突したり。。。スーツが頑丈だから肉片にならずに済んでいるものの常にボロボロです。そんなボロボロの彼を見てると、私はとても心配になりました。笑

これはバットマンが神や超人ではなくあくまでも人間であるという点を強調しているのでしょうかね。

「THE BATMAN-ザ・バットマン-」はそんな惨めな男がゴッサムシティの希望の光になることを志す話

作品の終盤、リドリーによるテロが起き、町が洪水で停電する中、バットマンは燦燦と輝く発炎筒を灯し、がれきの下敷きになった人々を救出します。そのシーンの中で、明かりを持ち暗闇を照らすバットマンを先頭に、救出された人々がついていく様子を俯瞰で撮影したカットがあります。これはバットマンがテロにより傷つき恐怖しているゴッサムシティの市民の希望となることを象徴しているのかなと思いました。

本作は正義のヒーローであることを否定されたバットマンゴッサムシティの市民のヒーローになることを決意する話だったのかなというのが私の感想です。

 

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THE BATMAN

参考

wwws.warnerbros.co.jp