ふじけんの映画ブログ

映画館で観た作品の感想や考察を書いてます。たまに好きな歌詞の解釈や勉強したことも載せてます。

映画週報「事後承認」(2024/12/24~2024/12/30)~相米慎二監督「夏の庭 The Friends」と「お引越し」、上田慎一郎監督「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」、安田淳一監督「侍タイムスリッパー」、チャンドラー・レバック監督「I Like Movies」~

毎度ご訪問ありがとうございます。ふじけんです。
年末ですね、皆さんは年間ベストは決まったでしょうか?僕は年末ぎりぎりまで映画を観ようと思うので、年明けに出そうと思います。

1週間に観た映画の感想や解釈をまとめるシリーズです。

今回は2024/12/24(火)~2024/12/30(月)に観た作品、相米慎二監督「夏の庭 The Friends」と「お引越し」、上田慎一郎監督「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」、安田淳一監督「侍タイムスリッパー」、チャンドラー・レバック監督「I Like Movies」となります。

1回しか見ていないので、記憶が不正確な箇所があるかもしれませんが、振り返ってまとめておこうと思います。

作品のネタバレを含みます。また個人の感想であり、事実とは異なる記載が含まれることがありますのでご容赦ください。

 

 

相米慎二監督「夏の庭 The Friends」と「お引越し」

相米監督作品はメジャーの配信サイトに流れてこないため、自分は「台風クラブ」しか観たことがなく、今回の上映を心待ちにしていました。

分量が多くなってしまったので、別出しで記事にしていますので、良かったら見てください!

fuji-ken.hatenablog.com

上田慎一郎監督「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」

「カメラを止めるな!」で有名な上田監督作品。成金に辱めを受けた税務署職員の中年男性が詐欺師と手を組んでリベンジをするというストーリーでした。エンタメ作品としてとても面白く観ました。最後の種明かしもよく機能していたと思います。

さて、本作は合法的に”裁けない”橘を、詐欺に掛けるという外法をもって裁くという話です。このような法外の裁き(私刑)は日本のコンテンツでは時代劇でよく見られた型で、例えば必殺仕事人シリーズなどはそうだと思います。法(刑罰)という枷とそれを飲み込めない個人の感情というコンフリクトが生じることにより、作品のドラマに深みが生まれています。

本作における枷は2つあります。1つは明文法、具体的には税法で、もう一つは常識や空気という不文律です。この2つの枷と個人の感情、本作では怒りとのコンフリクトが作品の推進力になっています。前者は詐欺師集団によって、詐欺という外法による制裁が加えられ、後者は若者女子である望月の蛮行の数々によって閉塞的な状況が打破されます。公務員である税務署職員という職業はこのコンフリクトを引き受けるのに最適であったと思います。

主人公の熊沢は税務署職員で、法律に従って仕事をしているわけですが、脱税という法を外れた存在である橘に対して法に従って制裁を加えることはできません。手も足も出ない熊沢でしたが、橘が同僚の死の遠因であることを知り、公務員という身分でありながら、法の外に出る決断をします。法を順守すべきだという熊沢の信念、生き方と同僚の死、橘への怒りが天秤に掛かり、そこに強いコンフリクトが生じています。

https://eiga.k-img.com/images/movie/101788/photo/dcd7696812b77b91/640.jpg?1725354146

(熊沢 演:内野聖陽

もう一つの枷である常識や空気という不文律に対するコンフリクトは熊沢と彼の部下である若手女性職員の望月との対比から描かれています。熊沢は常識や空気に対して従順です、橘にワインを掛けられても逆上せず、笑みを絶やしませんでした。「ここで橘を殴ったら、自分が処分されてしまい、家族に迷惑がかかる」と考えたであろう熊沢は相手に非がありながらも謝るという大人の選択します。一方、望月は謝らなかったようです。「お仕事として、とりあえず謝っておく」という常識は彼女には受け入れられないものだったようです。そもそも、望月は橘のチャリティーパーティに潜入し、そこで脱税について詰問するという常識的な感覚からしたらありえない行動をとっており、それが一連の出来事の発端になっています。

しかし、この望月の”余計な”蛮行をきっかけに同僚の死に橘が関わっていたことが発覚し、諦観に満ちていた熊沢を突き動かします。またチャリティーパーティーに同行していた酒井(詐欺師集団の内通者)から氷室に連絡が行き、熊沢と詐欺師集団を結びつけることになりました。そう考えると望月の蛮行は物事全体を良い均衡点に持っていくファインプレーだったわけです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/101788/photo/eeffcfd5a8d3264b/640.jpg?1725354127

(左 望月 演:川栄李奈

負の均衡点を打ち破ったのは望月による常識外れの行動と熊沢による法を破るという決断だったと思います。いずれの決断、行動も批判の的になるでしょうが、現代日本の「仕組みの深さ」(閃光のハサウェイ内のハサウェイのセリフ)を破壊するには明文法も不文律も逸脱する必要があるのかもしれません。本作はとてもよくできたエンタメ作品ですが、現実現代日本の問題点や閉塞感をテーマとして取り扱っていることも分かるかと思います。

filmarks.com

安田淳一監督「侍タイムスリッパー」

先ほど時代劇のストーリーの型について言及しましたが、本作はそんな時代劇の作り方、映画についてのお仕事もの映画でした。侍がタイムスリップしてしまうというタネの作品内リアリティ、整合性は正直どうでもよく、現実現代の日本で時代劇を作ることの困難さとその矜持を感じることができました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/100886/photo/4a9ddf2de97b7f6c/640.jpg?1717980283

(左 高坂 演:山口馬木也 右 風見 演:冨家ノリマサ)

作品内リアリティ、整合性は正直どうでもよいとは言ったものの、言葉は通じるのかとか文字は読めるのかとか、いきなり現れた高坂さんに不信感を抱かないのはさすがにありえないんじゃないかとか引っかかる点は多々ありました。

ただ、高坂の世代ギャップを超えた時代ギャップに笑わせられたり、作り手側のメッセージを代弁したであろう風見のスピーチのシーンは感動させられたりしたので、エンタメ作品として万人が楽しめる作品だと思います。ロングランの大ヒットとなっていますが、配信が始まったらご家族で観ても楽しい作品かと思います。

filmarks.com

チャンドラー・レバック監督「I Like Movies」

こちらも映画についての映画、というか映画ファンについての映画です。他人とうまくコミュニケーションができない高校生男子ローレンスの姿は痛々しかったです。ラストシーンで彼の仕切り直しの場としての大学生活が少し描かれ、希望に開かれたエンディングで終わっていますが、結局彼は高校ではうまくいかなかったという失敗談として描き切っている点が良かったと思います。

ローレンスは(高校時点では)ナルシストで、他人への配慮がなく、人の話を聞かない男の子でしたが、映画にあれほど夢中できる才能、過剰に表出されている自己があることは羨ましくもあります。アラナは「きっとみんなあなたのことが好き」と言ったのはお世辞でもあるでしょうが、本心でもあるのでしょう。バイト先の店長アラナによる献身的な助言はきっとローレンスの大学生活を救うはずです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/102475/photo/fe5031e9a343b39d/640.jpg?1731629206

(左 アラナ 右 ローレンス)

filmarks.com